近頃大涌谷が騒がれていて、うんざりしています。
規制されてるのは大涌谷周辺だけなのに、テレビでも大袈裟に放映されてる気がしてます。
でも、今日の遊戯王DMリマスターで、先週に引き続きお気に入りの回が放送されたので気分上々。
もう闇遊戯がかっこよすぎる
スナッチャー。
それはオーレ地方を根城にしているスナッチ団の、特別な団員に与えられる通り名。
しかし今は別の意味を持ち、一人歩きをしている。
「随分と派手に暴れているようだな」
彼の来訪はいつも突然で心臓に悪い。
いつの間にかヘルゴンザの部屋に忍び込み、あっという間にいなくなる。取り押さえる暇などないし、仮にあったとしても実力差を考えると難しいだろう。
それでも、表面上は平静を取り繕う。
しかし、ヘルコンザの動揺など彼にはお見通しなのだろう。それに悔しさを感じないわけがない。
「ああ。少し、仕込みをな」
そう彼……巷でスナッチャーと呼ばれている青年は苦笑した。
オーレコロシアム優勝者。
賞金稼ぎであり、自らも手配されている犯罪者。
元スナッチ団のスナッチャーで、ヘルゴンザの元部下。
ヘルゴンザの記憶では、彼は目立つことを極端に嫌っていたはずなのに。
「あの嬢ちゃん絡みか?」
「ん、まあ、な」
珍しく、歯切れの悪い返答。
「……実はな、引退しようと思ってる」
「はぁ?」
その告白に、ヘルゴンザは耳を疑った。
このような商売、引退など出来るはずがない。指名手配は、捕まるか死ぬまで解かれることはないだろう。
だというのに。
「……偽装、するつもりか」
「こんな職業だし。俺自身いつ死ぬか分からない身だしな」
そう、ひょいと肩を竦める。
「とはいえ、完璧に足を洗うことは出来ないだろうが……それでも、表だって動くことはしないつもりだ」
「だから今大暴れしてるのか。その後死んだって噂を流しやすくするため」
「ああ」
突然、活動が立ち消えたら。
そして死んだなんて噂が流れたら。
信憑性はともかく、その情報はすぐに出回ることになるのだろう。
「……誰に、殺されるつもりだ」
「俺の……家族、だな」
そう言う青年の表情は、ヘルゴンザが見たことないくらい綻んでいた。
「家族。テメエ、家族がいたのか?」
「ああ。……俺には、出来過ぎた弟だ。……っと、これはオフレコだから、誰にも言うなよ」
「言わねえよ」
あのスナッチャーに家族がいる。
それをヘルゴンザが漏らしたとたん、その真相を探ろうとする輩がこのアジトに攻め入るだろう。
そしてそれを青年が知ったとたん、今度は青年がヘルゴンザに牙を剥く。
「そんで、そんな爆弾落として何のつもりだ」
「別に、アンタにはちゃんと挨拶しとこうと思ってさ」
「いらねえよンなもん。さっさと消えろ」
「ああ、そうする」
あっさりと、青年は背を向けた。そして躊躇なく窓から飛び降りる。
「……ったく」
それに一抹の寂しさを感じながら、ヘルゴンザは苦笑した。
1、煙
「あ、珍しい」
ミレイの声が聞こえて、レオは手にしていた煙草を携帯灰皿に押し付ける。
「レオが煙草吸ってる」
「吸っちゃ悪いか?」
「ううん」
ふるふると首を横に振るミレイ。
「でも何か、もったいないな」
「何がだ?」
「煙草吸ってるレオって新鮮で、カッコいいかも」
「……別に、恰好つけるつもりで吸ってるわけではないんだが」
「うん、知ってる」
腕に抱きついてくるミレイを、レオは振り払えなかった。
2、恐怖政治
レッドがゴルバットの怪しい光を直接見てしまった。
「おいおい」
混乱したレッドは、訳も分からず自分……ではなく味方であるはずのレオを攻撃してきた。
苦笑してはいたが、レオは内心で焦っていた。
レッド自身は気付いていないしレオも言うつもりはないが、レッドは自分で思っているよりも強くなっている。
普段は無意識に抑えている実力だが、相手が『敵』でこれが『実践』だとすればその実力が遺憾なく発揮される。
対し、レオは相手が実弟であるということで当然本気を出せない。
「……ふざけんなよ」
そんな呟きが漏れた。
「この……未熟者が」
地を這うような、とはこのことだろうか。
その声は混乱しているはずのレッドにも届いたらしい。体が硬直する。
「に、兄……さ、ん?」
どうやら正気に戻ったらしい。
だが、遅い。
「少しは、反省しろ」
悲鳴が、響き渡った。