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報告(ポケコロ)

スナッチャー。

それはオーレ地方を根城にしているスナッチ団の、特別な団員に与えられる通り名。


しかし今は別の意味を持ち、一人歩きをしている。





「随分と派手に暴れているようだな」

彼の来訪はいつも突然で心臓に悪い。


いつの間にかヘルゴンザの部屋に忍び込み、あっという間にいなくなる。取り押さえる暇などないし、仮にあったとしても実力差を考えると難しいだろう。

それでも、表面上は平静を取り繕う。

しかし、ヘルコンザの動揺など彼にはお見通しなのだろう。それに悔しさを感じないわけがない。

「ああ。少し、仕込みをな」
そう彼……巷でスナッチャーと呼ばれている青年は苦笑した。


オーレコロシアム優勝者。
賞金稼ぎであり、自らも手配されている犯罪者。

元スナッチ団のスナッチャーで、ヘルゴンザの元部下。


ヘルゴンザの記憶では、彼は目立つことを極端に嫌っていたはずなのに。

「あの嬢ちゃん絡みか?」
「ん、まあ、な」
珍しく、歯切れの悪い返答。

「……実はな、引退しようと思ってる」
「はぁ?」
その告白に、ヘルゴンザは耳を疑った。

このような商売、引退など出来るはずがない。指名手配は、捕まるか死ぬまで解かれることはないだろう。

だというのに。

「……偽装、するつもりか」
「こんな職業だし。俺自身いつ死ぬか分からない身だしな」
そう、ひょいと肩を竦める。
「とはいえ、完璧に足を洗うことは出来ないだろうが……それでも、表だって動くことはしないつもりだ」
「だから今大暴れしてるのか。その後死んだって噂を流しやすくするため」
「ああ」

突然、活動が立ち消えたら。
そして死んだなんて噂が流れたら。

信憑性はともかく、その情報はすぐに出回ることになるのだろう。

「……誰に、殺されるつもりだ」
「俺の……家族、だな」
そう言う青年の表情は、ヘルゴンザが見たことないくらい綻んでいた。
「家族。テメエ、家族がいたのか?」
「ああ。……俺には、出来過ぎた弟だ。……っと、これはオフレコだから、誰にも言うなよ」
「言わねえよ」

あのスナッチャーに家族がいる。
それをヘルゴンザが漏らしたとたん、その真相を探ろうとする輩がこのアジトに攻め入るだろう。

そしてそれを青年が知ったとたん、今度は青年がヘルゴンザに牙を剥く。

「そんで、そんな爆弾落として何のつもりだ」
「別に、アンタにはちゃんと挨拶しとこうと思ってさ」
「いらねえよンなもん。さっさと消えろ」
「ああ、そうする」
あっさりと、青年は背を向けた。そして躊躇なく窓から飛び降りる。
「……ったく」
それに一抹の寂しさを感じながら、ヘルゴンザは苦笑した。



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