スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

この白さえ嘘だとしても

河野裕 著


自分自身に棄てられた人々が暮らす階段島。今まで流通していたネット通販が止まってしまい、その原因を解決するためにハッカーを探す真辺。ヴァイオリンの弦を失った女の子のために、弦を探し回る佐々岡。真辺へのクリスマスプレゼントを探す水谷。それらの探し物を手伝う主人公の七草と、大量に投函されたクリスマスカードを配達する時任。それぞれの視点で送られる、階段島シリーズ第2巻。


1巻を読んだ時にも思ったのだけれど。この物語は、ずいぶん現実感のあるファンタジーであるな、と思う。ついファンタジーであることを、忘れてしまう。それなのに、魔女、魔法、不思議な出来事、が面白く馴染んでいる。


理屈で成立した不思議、ではなく、なんとなくこんなことが起きたら面白いなぁ、というような不思議であるのに。論理的でしっかりとした幹を感じさせるところがこの作家の作風の魅力だろう。サクラダリセット、ベイビーグッドモーニングと続き絶妙なバランス感の作品だ。


いつもながら文章に透明感があって綺麗で読み心地も抜群。文章が美味しい。今作は真辺の出番は多くはないけれど、やはり七草との名前のない関係性にじわじわとくるものがある。水谷、佐々岡、時任にも共感でき、より彼らを身近に感じるところができた。


この作品に登場するキャラクターたちは、サクラダリセットの時と比べると、繊細で、神経質で、複雑で、毒があり辛辣で、初読ではあまり好きになれなかったのだけれど。人間臭いあまり、つい共感してしまう。実際に友達にいたら相性は悪いだろうなと思うキャラクターのほうが、なんだか親近感が持てる。


特に水谷。水谷の考え方や感じ方は不信感を抱く。嫌われたくなくて。できれば褒められたいから。それだけの自己満足な理由で、いい人を演じようとする姿は少し悲しくなりもした。だというのに、わかる。強く共感してしまう。ただ、真辺が嫌いだという気持ちを抱きながら、贈り物をする、というのはいささか汚く見えた。


表面だけ取り繕っていれば、中身は空っぽでもいい。今のこの本心を込めて贈り物を選ぶよりは、ずっといい。そう水谷は言うけれど。そんな本心を抱きながら贈り物をするよりは、しないほうがずっといいのだとわたしは思う。なかなか複雑な心境にさせてくれるキャラクターだ。真辺が綺麗だとわかっているから。素直なままでいられるから。嫌いだと、言う気持ちも、わからないではないから。


それでも、わたしは七草が惹かれるように真辺に惹かれる。彼女が現実にいたなら、友達になりたいくらい、好きだ。彼女の善性は素直で白く美しい。お気に入りのシーンは真辺が水谷にキーホルダーを渡す場面なのだけれど、この二人の関係がどう変化していくのか。信頼はどう築かれるのか、気になるところだ。


この作品は人間関係と感情の変化が面白い。七草と関わっていると真辺は可愛い。彼女の心情の変化を七草は望んでいないようだけれど、わたしはそこも期待してしまう。


実は再読で次作も一読しているのだけれど、再読したら、また感想を書いていきたいと思う。








月夜の島渡り

恒川光太郎 著


うわー!こんなにも面白い本に出会ったのは久しぶり。最近読んでいた本はどれも面白かったけれど、これはもう、面白すぎた!南の子供が夜いくところが大好きだった分、心配もあったんだけれど。そんなことは杞憂だった。一話目から最後のお話まで大当たり!やっぱり恒川光太郎さんの物語はいいなぁ。


舞台は沖縄。あの島にしかないミステリアスな雰囲気が物語の中に影を落とし、方言がスパイシーな味付けをしている。日常の中にちらちらと見える影からするりと異界へ迷い込んでしまう。少しぞくりとくる幻想的なホラー短編集。


ホラー文庫から出版されてはいるけれど恒川光太郎作品は、怖さよりも美しさが際立つ。一話一話現実に引き戻されては、また幻想にもぐっていくところがたまらない。気づけば異界と現実の間に立つ主人公たちの人生に、心をがっしり掴まれて物語の中を泳いでいた。


どの話も好きすぎて選びようがない。ネタバレをしないで読んだ方が楽しい小説なので詳しくは書かないけれど。胡弓の調べに吸い込まれていくヨマブリは愉快であったし、ニョラには頭からどっぷり幻想に食われてしまった。もうあの快感は、どう説明したらいいものかわからない。語彙の乏しい自分が悔やまれる。


夜のパーラーだけは幻想ではないけれど。クームン。幻灯電車。月夜の夢の帰り道。わたしはフーイー、はどんどん時が過ぎていくので、異界を旅しているような気持ちになる。主人公たちと一緒に年をとっていくような感じだろうか。人生を眺めていくというのは、感慨深いものがあった。特にフーイーは50年ごとに生まれ変わり、違う人生を生きていくのでユニークだ。ある人生では幸せに終わり、ある人生では不幸に終わり。同じように転生を繰り返した首狩りの魂が、あのあとどんな風に変化していったのか気になるところだ。二度目の人生が一番ホラー色が強く、結末にどきどきできて不思議と癖になる味だった。


この作品たちは、これ以上言葉にできない。言葉にすればするほど、楽しさが奪われてしまうように思うから。もしも興味を持たれた方がいたなら、自信を持ってオススメする。ぜひ、読んでみてほしい。

ビブリア古書堂4

三上延 著


ああやっぱりこのシリーズ面白い。ついつい紹介される作品が気になってしまうのはもう仕様だろう。今作は江戸川乱歩の古書の買取を目指して金庫の謎を解いていく長編。乱歩は有名だけれど読んだことはなかったので、栞子さんの話し出すウンチクには興味津々だった。


さすがに読み継がれている本は歴史がある。講談社版、ポプラ社版、光文社版、とこんなに出版されていたのか、色々な出版社から出版されていたんだなぁと。しみじみ思った。


最近になって表紙デザインのかっこいい新潮社版が出たらしいけれど、このアンティークな江戸川乱歩の作品の初版本はコアなファンやコレクターたちにとっては宝石も同然らしい。100万円以上の高値で売る、と書かれていてびっくり。昔図書室で見た怪人二十面相のホラーっぽい表紙を思い出して、本好き意識を刺激され、わくわくしてしまった。


ようやく出てきた篠川智恵子も頭がキレキレで侮れない感じがすごくいい。この人は、怖いなあ。どう話しかけてきても利用されているような気分になるのに憎めないキャラクターであるところは、わりと好きかもしれない。本当は仲の良い親子になれただろうに、本の話で二人で盛り上がっては、ハッと気づいて険悪になってしまう栞子と智恵子の仲がどう変わっていくのか今後が気になる。


気になる、と言えば。とうとう告白するに至った大輔と栞子の関係も期待が高まる。栞子さんと大輔がくっついてくれるのか、楽しみだなぁ。


今作は謎解きも多く、二転三転する展開も読んでいて楽しかった。次回作も買ってあるけれど現在6巻まで出ているようなので集めたいところだ。


もったいないから、なかなか手がつけられないけど。

鍵屋甘味処改3 子猫の恋わずらい

梨沙 著


鍵屋主人の淀川の誕生日プレゼントに、鍵ミュージアムへ行くことにした主人公のこずえ。古い木製の鍵に執心している淀川を待つことになった彼女は館内で眠ってしまい、淀川の祖母、淀川銀子の人生を辿る夢を見る。オカルト色が物語を彩るところが今作の味らしい。面白かった。


主役は幽霊と鍵だ。オカルトが少し苦手なので、窓を叩くような音がするとか、見られてる気配がするとか、似たような経験がある分だけ肌寒く感じたものの、鍵ミュージアムと鍵開けゲームに惹かれて1巻2巻よりも楽しめた。


鍵ミュージアムだなんて。ロマンが詰まっている。タンブラー錠に金庫に宝箱。描写される様々な鍵をイメージするうちに、わたしも博物館を満喫しているような気分に浸れた。現実にもこんな展示会催してくれないだろうか。あるなら行ってみたいところ。


誕生日プレゼントと交換のように貰った鍵屋の鍵には、わたしまでつい嬉しくなってしまった。好きな時に来て、勝手に入っていいと言う証である鍵は、特別なアイテムだろう。素直に喜ぶこずえを包みこむように受け入れてくれる淀川、という構図が微笑ましい。恋はまだはじまったばかりだけれど、淀川のほうがどう変化していくのか楽しみだ。


屋敷中にある鍵を開けてコインを集め、その枚数を競うゲームも、集まった鍵師たちが一斉に鍵を開けている場面を想像するとわくわくする。初出の鍵師たちも個性が強くて会話も愉快。


欲を言うならば淀川銀子のオカルト描写をもう少し温かいものにして欲しかったところだけれど。全体的に和気藹々として読後感がいい作品だ。次回作も買ってあるので近いうちに読みたいと思う。

はじめまして、本棚荘

紺野キリフキ 著


姉に留守番を言いつけられ、海外に発った彼女といれかわりに東京へきた妹の、''わたし”。


昔はねぇ、お家賃というのは本で払ったものですよ。という物語の冒頭に引き込まれて、本がたくさんでてくる物語なのだな!と思っていたら、姉にかわりとげ抜き師になった主人公と、本を読まないアパートの住人たちとの日常を描いた物語だった。


とげ抜き師。耳慣れない職に新鮮さを覚えつつ、読んでいくと、自然とトゲ、というものがどういうものを指しているのか、ユニークな想像が広がっていく。一話目の百合枝さんの背中のはっぱを抜くときのイメージで、ちょっとファンタジーな設定なのだなと理解ができるから、後々まで出てくるトゲも、わたしは髭のようなトゲを想像していた。


斬新で面白い設定だったと思う。わはは、と笑うような面白さではなく、思わずにやりとしてしまうような、え!?と戸惑ってしまうようなシュールな画面作りがこの作家さんのお得意芸なのだろう。トゲだらけの野良サラリーマン氏とやる気ゼロで寝てばかりいたヒナツさんとの恋愛がお気に入りだ。


もちろん彼らばかりでなく、テキトーな事ばかり言っていつも怪しい猫遣いさんや面白い話を聞かせてくれたら家賃をまけてくれるという大家さん。猫遣いさんとこの猫オロビアンコ。など他のキャラクターたちも変わり者ぞろい。主人公の人間味のなさもまた愉快な個性で、奇妙な会話、奇妙な展開がテンポよく進むところが心地がいい。


小説のような、台本のような、絵本のような、文学界のピカソを連想させる作品だった。著者の作品はツクツク図書館も読んだのだけれど、本がたくさんでてくるので本好きさんにはあちらのほうもオススメだ。
prev next