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第二章突入

もっと早く更新するつもりだったのですが…すみません;

タイトルにすごく悩みました


“兵器だと言い切る月島”と“強化人間でも仲間として受け入れるジャック”

逆の考えを持つ二人と言うの意味を込めて
〜と違う“unlike”と言うタイトルに至りました


英語

が使いたかった

……いやなんでもありません(笑)


ジャックと月島の紹介は後ほど

第十三話 unlike

うっすらと意識が戻っていく
血の匂いが気持ち悪かった


「なぜ民間人が戦場にいた!?」


男が声を張り上げるのが聞こえた


「わかりません!ただ“赤い髪に赤い目のこの子供が戦っていた”と別の兵が…!」

「その“赤い髪に赤い目の子供”がこの少年なのか?」


男の声に若い男が困惑したように声を上げる
先ほど声を張り上げた男が低い声で問う


戸惑うだろう
赤いはずの子供の髪は黒い髪をしていたから



ゆっくり目を開く

明かりに目を細めた


「この血は?」

「怪我ではないようです」

「すべて返り血だって言うのか?」


会話を聞きながら、まだ覚醒しない頭と目で周りを観察した

簡易のテントだとなんとなくわかった


「衛生兵を呼びますか?」


若い男が訪ねた


「……必要ない」


毬夜はゆっくり身体を起こした
若いアラナミ防衛軍の兵士と無精髭を囃し精悍な顔つきをした同じくアラナミ防衛軍の兵士が居た

二人とも土埃で頭から軍服まで真っ黒だった


「だっ大丈夫なのか!?」


突然起き上がった毬夜を見て若い兵士の声が驚きで上擦った


「怪我はしてない。」


毬夜は淡々と答える
若い兵士は驚いていたが無精髭の兵士は黙って毬夜を観察している


「なぜ民間人が戦場にいた?」
「………」


無精髭の兵士が口を開いた
毬夜が押し黙る


「私たちが派遣したのですよ。ジャック・クニヨシ大佐」


若い男の声が簡易のテントに響いた
二人の兵士が振り返って、毬夜はその声の主を睨んだ


「月島…」


若い眼鏡の男がテントの入り口に立っている
低い声で毬夜が唸る


「何者だ」


無精髭の兵士 ジャック・クニヨシ大佐が、月島文殊に険しい顔を向けた



「研究員ですよ。“聖石プロジェクト”の」


文殊が薄く笑って眼鏡をあげた


「聖石プロジェクト?」


知らない言葉にジャックの表情が一層険しくなった


「簡単に言うと“強化人間”を作り出す研究ですよ」

「強化人間!?」


文殊がさらっと言いのけると若い兵士が驚きの声を上げたが
ジャックは表情を変えない


「この子供が“強化人間”だって言うのか?」


そうですと文殊が答えた

ジャックは文殊から視線を毬夜に向けた

“返り血で赤黒く染まったシャツと身体についた乾いた血”

少年は眼鏡の男を睨んでいた


「馬鹿な…非人道的だ…そんな研究をアラナミが行っていた…と?」


ジャックが文殊に鋭い視線を向けた
文殊は眼鏡の瞳を細めて、ふと笑った


「非人道的?アラナミの“軍事強化”に力を貸した貴方が言うのか?」


文殊を睨んでいた毬夜は目を見開いてジャックを見た

ジャックは表情を変えない


「…アラナミ…の“軍事強化”…」


自分の前に現れた“強化人間”のマリー

大国 ビット軍を一時間で撃退したアラナミの想像以上の戦力

アラナミが軍事強化を行っていると


わかりきっていたことだった



「あぁ。確かに俺は軍事強化に力を貸した。だが“聖石プロジェクト”の“強化人間”なんて聞いた覚えがないな」


ジャックは否定せず、言い返した

文殊は浮かべた笑いを消さない


「だが見たはずだ、“戦場をかける銀髪の少女”」

「………!」


はっとジャックの脳裏によぎった

銃弾の中を舞う銀

スコープ越しに見た金


「理解いただけましたか?」


文殊は人差し指で眼鏡を上げた

毬夜もジャックも若い兵士も黙ったままだった



「この“兵器”、“試作品第一号”はあなたの第6部隊に預けます。好きに使って下さいクニヨシ大佐」


そう言って文殊は簡易テントを出ていった


沈黙





「お前、名前は?」


その沈黙を破ったのはジャックの低い声だった

ジャックは真っ直ぐ毬夜を見た


「…金城…毬夜…」


ジャックの視線に気圧されて小さな声で毬夜が名乗る


「毬夜、アラナミ防衛軍第6部隊に歓迎する」

短編あとがき

毬夜の“今”の両親 アリアと龍真の話を書きました。

結構前に書き終えていたのですが
この短編2本は繋がっているので同時に上げ、補足をいれないといけなかったのでタイミングがありませんでした…。


アリアの話を読むと龍真に愛がないように思えますが
ちゃんと夫として愛しています
しかし毬夜にそれ以上の愛がある…少し歪んだ感じです。


毬夜がアリアと龍真に遠まわしに結婚を進めたのは
アリアが自分“毬夜”に依存していることに気づいたからです

毬夜はアリアの想いを受け止めることはできません


龍真がアリアを幼い頃から好きだったことを毬夜は知っていたのでアリアを任せることにしました


「アリアを依存から救ってほしい」


これが本当の毬夜の願いです



結局、アリアはその依存から放たれていなかった…と言うわけです




短編2本上げました

次回ついに第二章突入です

もともと7月第二章突入予定だったので間に合って良かったです。

のろのろ更新になりますがよろしくお願いします

とある少年の話


僕の“家族”は普通と違って
いろいろな国から親を亡くした子供たちが僕の“兄弟”だった

僕だけ両親と血が繋がっていた

他の兄弟たちの羨望の眼差しが怖かった

だから強がったフリをした

その強がりを見抜いたのは“彼”だった




「またアリアと喧嘩したのか?」


“彼”は僕の目線に合わせるようにしゃがんだ
僕は目を逸らした


アリア

赤ちゃんの時、僕の“家”にやってきた二つ年下の金色の髪に青い目をした女の子


「アリアが生意気なことを言うからいけないんだ!」


年下のアリアは生意気でいつも些細なことで喧嘩をした


僕はいつからか、アリアのことが気になって仕方なかったんだ

でもアリアは僕のことは嫌いで


「龍真、女の子を大切にしなきゃ“母さん”が悲しむ」


“母さん”
僕とアリアと兄弟、
そして“彼”の母親


母さんは病気でずっと寝たきりだった


「母さんは龍真に優しくて強い男の子になってほしいんだよ。」


“彼”はそう言って僕の手を優しく握った

弱々しくなっていく母さんを見て、僕はとても怖くなるんだ



「龍真は強い子だって俺は知ってるよ。」

ふいに目の前が霞んだ
泣いていると気づいたから泣いてないフリをした

それすら“彼”は見抜いていて僕の頭を優しくて撫でた


「…ごめん…なさい…」


ボロボロとこぼれ落ちていく涙がかっこ悪くて、嫌だった


「ごめんはアリアに言うんだよ」


“彼”はもう一度僕の頭を撫でて、“アリアを迎えに行ってくるよ”と立ち上がった

僕は必死に涙を拭って“彼”を見上げた



「兄ちゃんみたいに優しくなれる?」


“彼”は優しく微笑んで頷いた







アリアが“彼”に手を引かれて帰って来た

頭に乗った花の冠がとても似合っていて、お姫様みたいだったのを今でも覚えてる







14才の時だった

“彼”の赤い瞳を見た

悲しそうな瞳

身体を抑えて苦しむ姿

“彼”の正体を知った


「大丈夫、」


泣いている僕を見て
苦しそうに彼は微笑んだ

優しくて強い“彼”

僕は“彼”も家族もみんな守れる強い男になると決めた

絶対に泣かないと決めた




18才の時

母が息を引き取った


「“母さん”ありがとう」


“彼”が悲しそうに微笑んで母の手をとった

近いうちに母の命が終わることを僕は覚悟していた

だから強くなろうと
泣いている家族を支えようと
涙は見せなかった


「なぜ龍真は泣かないの?」


アリアが泣きながら訪ねてきた

僕はなにも言わずに彼女を抱きしめた

彼女と喧嘩する日々はずっと前になくなっていた





翌年
アラナミ防衛軍 空軍の父が事故で亡くなった

僕が“金城”を継ぐことになった

泣いている暇などないと僕は必死に勉強した


早く僕が家族、大切な人を守らなければならないから







「龍真、一人で背負い込むことはないよ」


ある日、彼が言った

僕はいつの間にか“彼”の身長を越していて、彼より大人になっていた

“彼”は僕が幼い日のままの少年だった


「支えてくれる人、いるんじゃないか?」


ずっと勉強に追われる日々

支えてくれる人?
わからなかった

すると“彼”は微笑んだ


「アリア、」


言われて気づいた

大切な人………


アリアがずっと特別で、“彼”しか見ていないアリアが歯がゆくて……、


はじめて“彼”を超えたいと思った







24才の時


「君を、“家族”を幸せにしたい。」


僕がアラナミ協会の状勢管理課に勤めるようになった年のアリアの誕生日


「僕と一緒に“家族”を守ってくれないか」


僕はアリアの薬指に指輪を通した

彼女は迷いなく頷いてくれた


少年のままの“彼”は僕たちを誰よりも祝福してくれた




“彼”が僕を“父さん”と呼ぶようになった

子供がたくさんできた

どの子供とも血は繋がっていない

僕とアリアの間に子供は出来ないと言われた


「僕に何かあったら“金城”を継いでくれないか?」



と申し出た僕に“彼”は
“それはできないよ”と
悲しそうに首を横に振った

僕は言ってはいけないことを言ってしまったと後悔した














僕が家族のもとへ行くと泣き崩れたアリアと大泣きする子供たちがいた

“彼”の姿はなかった

“彼”が戦争へ行ってしまったと翔太が泣きながら言った

優しい“彼”を奪った世界
僕は悔しさに涙をこぼした



「毬夜、」



アリアが泣きながら名を呼んだ

僕は“彼”を超えられない

とある少女の話


私は生まれてすぐ両親を無くした
名もわからない私を遠い国のとある家が引き取った

そこには私と同じ親のいない子供がたくさんいて


“彼”がいた



「アリア、」


金色の花が咲く、丘
泣いていた私の頭を“彼”が優しく撫でた


“アリア”と言う名は“彼”が付けてくれたのだと10才の時に知った

どこかの国の神様の名前



「アリア、」


しゃがみ込んでいた私の隣に“彼”が座った


「龍真はいつも私をいじめるの」



龍真はいつも私をいじめる
言い返しても、やり返しても
私は負けて、この丘で一人泣いた

そうすると“彼”が来てくれた


「龍真は今辛いんだよ」


私を引き取った家

“金城”

龍真はその家で唯一血の繋がった金城の子だった

私の“母親”であり
“龍真の母親”は病気でずっと寝たきりだった



「きらい…龍真なんてきらい…」


私をいじめる龍真も
本当の両親のいる龍真も

きらい

きらい

大きらい


「…お兄ちゃんは龍真の味方をするの?」


私は顔を上げて“彼”の横顔を見た

そうすると“彼”は困ったように笑った


「俺は、いい子の味方だよ」


金色の花を一輪摘んで笑った


「アリアも龍真も大好きだよ」

優しい微笑み
私の涙を拭ってくれた

金色の花と白いお花を組み合わせてお花の王冠を作って私に被せた


「帰ろうか泣き虫お姫様」


そう言って私に手を差し出す
私はその手を取った


「私、私もお兄ちゃんのこと大好きだよ!」


私よりずっと背の高い“彼”を見上げる

泣いていたことなんて忘れたくらい笑った


「私ね。お兄ちゃんのお嫁さんになりたい!」



私は“彼”が大好きだった

誰よりも

誰よりも



「ありがとう」



“彼”は照れたように、でもどこか寂しそうに笑った





帰って来た私を見て龍真が

「ごめん」

と小さくつぶやいた












私が16才の時
龍真の、私の母親が息を引き取った


「“母さん”ありがとう」


あの丘で泣いていた私を迎えに来てくれた時と“変わらない少年のままの彼”が母に悲しそうな笑み浮かべて手を握った

私たちは泣いた

でも“彼”も龍真も泣かなかった


「なぜ龍真は泣かないの?」


そう言った私を龍真は優しく抱きしめた

あたたかった


龍真が私をいじめることはずっと前になくなっていた




その翌年

空軍の龍真の、私たちの父親が事故で亡くなった


私たちはまた泣いた

でもやっぱり“彼”も龍真も泣かなかった



龍真が“金城”を継ぐことになった

毎日勉強する龍真の背中を私たちは見ていた


その背中を誇らしく感じた





18才の時

“彼”の赤い瞳をはじめて見た

悲しそうな瞳

身体を抑えて苦しむ姿


私は大好きな“彼”を守りたいと思った







「龍真の背中…私好きだな」


とある日私はポロリとそう“彼”にこぼした

ほとんどの兄弟たちは一人立ちしていって、
金城の家には私と龍真と妹と弟、そして“彼”だけになっていた


「今はきらいじゃないの」


私は笑った

きらいだった龍真

今は誇らしいと思う



「アリア、龍真を支えてあげてくれないか」


“彼”は優しい笑みを浮かべた

龍真となら“彼”を守れる





22才になった日


「君を、“家族”を幸せにしたい。」


ずっと大人になった龍真が真面目な瞳で、声で私に言った


「僕と一緒に“家族”を守ってくれないか」


私の薬指に指輪を通した

私は頷いた


“守りたい”

“彼”を守りたかった


あの時と変わらない少年のままの“彼”は私たちのことを祝福してくれた


幼い日の夢は実現できないとずっと前に知っていたから、私は龍真の手を取った

“彼”がある日言ったように私は龍真を支える存在になった




龍真と結婚して数年

たくさんの子供ができた

一人も血は繋がっていない

でも愛しい子供たち


私たちの間に血の繋がった子供を作ることは出来ないと医者に言われた



一人泣いた私を“彼”はあの幼い時のように優しく頭を撫でてくれた







“彼”が私のことを

「母さん」

と呼ぶようになった

“彼”は変わらない
ずっと少年のまま


でも日に日にその心が冷めていくことに私は気づいた

だから私は“彼”を抱きしめた







「“アリア”、みんな、ありがとう」


彼は私に背を向けた

“彼”が行ってしまう

ずっと守ってきた“彼”

泣き崩れた私


ずっと幼い日が蘇る

私は泣き虫のままだった



行かないで
行かないで


私の愛しい人




「毬夜…、」
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