「はぁ、はぁ、はぁ、」

(ここは、あらかた、片付いた)

「はぁ、は…くそっ」

(腕、痛い…油断した)

(帰って早く休みたい。いやその前に沢田咬み殺す)

いくら僕を信用してるからって、これはあんまりだ。
あたりに散らばる無数の死体にうんざりする。足の踏み場も無い。マフィアってのは、人殺しだけが仕事では無いだろうに。

(出る杭は叩く、イコールは、皆殺し。にしたって、これは、数が多すぎる)

いくら雑魚の寄せ集めでも、分が悪い。こんな面倒な仕事、骸と僕だけに任せるなんて、他の奴らはどうした。

(そういえば、骸は)

カタン

(…!?まずい、始末仕切れていなかったのか)

気配だけで姿が見えない相手。僕はといえば死体に囲まれ動きが鈍るのは目に見えていた。隠れる場所など何処にも無い。

(銃はあまり使いたくなかったけど、仕方ない)

護身用だとしつこく言われ沢田に渡された32口径を静かに構えた。見えなくても十分だ。相手だって隠れる場所など無いはずだ。

(逃げずにいたことは、褒めてあげるよ。さようなら)

銃声と噴煙、ドサリと崩れ落ちる音。肉の塊を踏みつけて気配のあった方に近づいた。念には念を。まだ息をしていたら頭に銃口を押し付けて止めをさしてやろう。せめてもの情けだ、早く楽になりたいだろう?

「…」

(暗くて、良く見えない)

「…」

(なんだろう…ざわざわする)

「…む、く」

(これ、僕は知ってる)

「骸」

(この蒼い髪、僕は知ってる)

「骸、どこにいるの」

(死体に紛れてるこの死体を、僕は知ってる)

「ねぇ、返事しなよ」

(この死体が骸だって、僕は、)

「ねぇ、死んだの?」

(沢田に、電話、しなきゃ)

「沢田、早く出て、早く」
『雲雀さん、片付きました?』
「沢田、救護班、呼んで」

(骸が、倒れてるんだ)

『怪我したんですか!?大丈夫ですか!?骸は!?』
「骸?骸は、ここに、いる、けど、」

(僕が撃ったのは、)

『待ってて下さい今すぐ送りますから!』
「沢田、僕は、平気だけど、骸、は、」

(撃ってしまったのは、)

『骸が怪我してるんですねとりあえず簡易処置だけでも、』
「骸、は、息してないんだ」

(骸、だったんだ)

『…』
「ねぇどうしよう」

(骸、だった)

『…雲雀さん、そこで待ってて下さい。直ぐ行きますから』
「どうしよう骸が死んだ息をしてない目を開けない死んだ骸が死んだ僕が、」

(僕が殺したんだ)

『雲雀さん…大丈夫ですか…?』
「大丈夫?何が?僕は死んでない」
『…いえ、待ってて、下さい…』

プツッ

(骸、ねぇ骸)

「骸、骸、骸、骸、」

(ねぇ)

「骸、僕は疲れたよ。沢田に文句言ってやらなきゃね」

(ねぇ、起きてよ)

「暫く休暇を取ろうと思うんだ、そうだな、1ヶ月くらい」

(何か言いなよ)

「君と2人で、遠くに行こうと思ってたんだ」

遠くに。そう遠くに。僕を置いて先に行くなんて、酷いじゃないか。

「待ってて、直ぐ追い付くよ」




ひ ど い
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