密会 ver4
「もう少し仲良くできないかな、荼毘」
そう問いかける男の口調は、言葉と裏腹に怒気に満ちていた。
密会場所として選ばれた倉庫の中は薄暗く、彼らの他には誰の姿もない。
男は、一枚の羽根から作られた短剣の鋭い切っ先を青年の喉元に突きつけていた。
その羽根の剣は男が自らの背中から“個性”によって生成したものだ。
「ザコ羽しか残ってなかったんじゃねえのか?」
切っ先を喉に突きつけられたまま青年が訊く。
「嘘つきと丸腰で会うわけにはいかなかったからな」
男の返答は、彼もまた青年に真実を伝えていなかったことを暗に示している。
青年――荼毘は、刺すような視線を彼に向けている眼前の男――ホークスを改めて見やった。
困っている市民がいればすかさず助ける人柄と気さくな性格、
そして端麗な容姿によって、No.2プロヒーローとして
人々から絶大な支持を集めている男の瞳が、静かな怒りに燃えている。
2018/7/25 Wed