@AB

42 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 13:54:38

そうか、……この子のおかげで朝から店を開けても、そのまんま俺の店にも来れたわけだ……

店は暖かい。

( ^ω^)「あれ? あなたは………フサの彼j──」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」

……ショボン……内藤……フサの友達か………

今日はこいつらが休みなのか…………

フサはいない……


目の前に出されたお茶。

湯気が出ている。

…………響き渡る笑い声……

( ^ω^)「…………にしてもぽろろ君の口癖は変だおー……」

( ,,・Д・)「……『ぃぇぁ』ですか? そんなん僕の勝手でしょ?……」

(´・ω・`)「……ブーンだって『お』とか『ブーーーン!!』とか変じゃないか……」

飲む。温かい。

( ^ω^)「……ぽろろ君ほど変じゃないお……」

( ,,・Д・)「…………なんとでもぃぇぁ」

( ,,^Д^)「……ははははは……」

ギコ…………笑ってるけど何が面白かったんだろ……あんまり聞いてなかったぜ……


43 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 13:55:33


孤独に侵食されすぎた。

フサがいないと

皆がどんなに笑っていても

疎外感しか感じねえ。


俺は寒い。


寒いんだ。

( ,,゚Д゚)「…………………………………………」

( ,,゚Д゚)「つーさん」

(* ∀ )「……ん、何だ……?」



( ,,゚Д゚)「そんな顔してたらフサさんに嫌われますよ」



(* ∀;)「え?」

Σ(,,;゚Д゚)「……ご……ごめんなさい……」


ギコ………………涙、堪えていたのに……

…………今の一発は痛えな……

……激痛だよ……

44 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 13:56:24

(* ∀;)「ごめん……もう帰るわ…………ここに金置いとくから……」


外。

もう嫌だ。

やめてくれ。

本当に発狂しそうだ。


ああ……あああああああ……。




もう。

家か。


頭冷やすわ。

風呂場。

冷たいシャワー。

(*;∀;)「……な、泣けばなんとかなるかなあ………………」

45 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 13:57:15


寒すぎた。

でも、シャワーは温かかった。

そう思った。



俺は笑わなくちゃならない。

俺のために。

フサのために。

泣いていたら、フサも悲しむだろう。

二人で笑って過ごせる楽園を作りたい。


もう、孤独はイヤなんだ。

フサ、愛してる……。


お前は…………どうなんだ?

そんなのはもうどうでもいい。

俺……やるしかないから……泣いても笑っても……

46 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 13:58:22


夜。

いつの間にこんな時間になっていたんだろうか。


(*-∀-)「………………」

(*゚∀゚)「…………行くぜ……」

庖丁が無い。お気に入りの、俺の宝物が。

フサの前で落としちまったもんな。

…………宝物じゃなきゃ世界を平和に出来ねえわけじゃねえ。

だから…………行くぜ…………

フサ……俺の庖丁持ってくれてるかな…………

捨てられてもいいんだけどよ…………


街。曇ってる。

今日は一日曇りっぱなしだな。太陽も月も見れない。

街にもそんなに人がいない。

俺のもくろみもほとんどだめになったのか。

…………大丈夫だろ……この世はまだ捨てたもんじゃねえんだ……

……そう信じるための力もほとんど無いけどな…………


でも、信じるぜ。

夢は信じるものなんだ。

47 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 13:59:20

……ん? 誰かいるな……二人か……最初のターゲットになってもらうぜ。

…………庖丁を取り出して……後から──


川 ゚ -゚)「こんなところで何をしている?」


…………………………朝の警官……

…………気づかれた。やべえ。

(*゚∀゚)「…………あ……」

…………銃を取り出しやがった……

川 ゚ -゚)┏「動くなよ」

……そんなこと言われたってよ……

(*゚∀゚)「…………い、いや…………あの……」

…………体が勝手に逃げるだろうが……

(*゚∀゚)「…………あ、…………失礼……」

…………俺の脚の速さをなめてもらっちゃ困るぜ……

……挑発してるわけじゃねえんだけど……よ……

川 ゚ -゚)┏「…………………」

すぐに拳銃をぶっ放すほどアホじゃねえようだな。

ξ゚听)ξ「追いかけましょうか」

川 ゚ -゚)「ああ」

48 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 14:00:02

覆面してるからバレちゃいねえかな…………

んなこたどうでもいい!!

とにかく逃げなきゃな!!!!


……っちい…………奴らもかなり速いぜ…………

川 ゚ -゚)「止まれと言ってるだろう」

…………む、無理だよ……謝ったら許してくれねえかな…………

ξ゚听)ξ「…………」

……あいつら……息が上がってないのか?…………駄目だ……


山。山だ。

近くの山まで逃げればなんとかなるだろ…………今家に帰るのはまずい……



ξ゚听)ξ「止まりなさいと言ってるでしょう?」

Σ(;*゚∀゚)「っっっ!!!!!!!!!」

……いつの間に………………くそ…………回り込まれた…………

49 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 14:00:58

川 ゚ -゚)┏「ようやく庖丁魔逮捕だな」

ξ゚听)ξ「そうですね」

く、くそ………………

……!!!!

銀の光が飛んできた。

警官の拳銃に直撃して、俺の足元にその光が転がり込んできた。



俺の庖丁だ。


「そんなに簡単には行かせないから」


黒いマントを羽織った男。覆面をしている。真っ黒だ。かっこいい。


声色こそ変えているけどさ…………


…………お前……

50 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 14:02:25

「……そこの女は俺の獲物だから」

ほ、ホントにフサか?! こんな言葉遣いじゃねえだろ???

川 ゚ -゚)「何を言ってるんだお前は…………」

ξ゚听)ξ「とにかく二人とも捕まえましょう」

「そうか………………」

あれ?…………消えた……あの警官も驚いてるぞ……

空が曇って暗いからよく見えないぜ……

……!!

……後に誰かいる……

ミ,,゚Д(*"∀")「つーちゃん、安心して」

声…………フサだ…………

……会いたかったぜ……


ミ,, Д(* ∀ )「……それ以上近付いたらこの女、殺すから。この庖丁でね」

Σ川 ゚ -゚)Σξ゚听)ξ「……………」


俺の宝物か……。

フサ…………? 恐いこと言うなよ……?

涙出そうだろ? いろんな意味で………………


フサが俺の首筋に庖丁を突きつけやがった。

川 ゚ -゚)「…………応援要請もある……いつでも捕まえられるだろう……」

ξ゚听)ξ「…………緊急で逮捕するべき人間かどうかも怪しいですしね……この状況では……」

警官たちが道を開けた。

ミ,,゚Д(*゚∀゚)「じゃ、ね」

51 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 14:03:10

……ちょ、ちょっと!!

フサ! 抱きかかえるな!! 恥ずかしいだろ!!!

お姫様ダッキングじゃねえかよ!!!!

…………あ、……速い…………フサって……こんなに脚速かったんだ……

………………お前にこんな筋力が?…………

……俺を抱きかかえてるのに…………あの警官も追ってこれてねえぜ………

……俺がフサを知らなすぎただけか……?

こんなに近くにお前がいるのに……

……なんか取り残された感が抜けないぜ…………


ミ,,゚Д゚彡「どこに行けばいい?」

(*゚∀゚)「え…………や、山だ……山に向かってくれ…………」


嬉しいけどよ…………

…………言いたいことが山ほどあるんだぜ…………覚悟しろよ…………

………………洒落じゃねえぞ!!…………

……………………なに独り言言ってんだよ……俺……
……駄目だ……相当馬鹿になったんだな…………

…………てめえの所為だぜ…………

その覆面の下にいる……かっこいいお前……

52 :極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/02/10(土) 14:04:07

山…………頂上だ…………こんなところまで……標高100mぐらいか……

フサはあっと言う間に俺をこんな世界に連れ込んだ。

ミ,,゚Д゚彡「……さ、ここら辺でいいかな?……」

フサが覆面を取った。

間違いなくフサだ。

俺も取る。

ミ,,゚Д゚彡「ほら、つーちゃんの宝物だろ? やっぱり宝物は持ち主の手に無いとね」

……庖丁……返してくれた。

(* ∀ )「…………なんで……」


ある意味信じたくなかったんだ……


ミ,,゚Д゚彡「…………」

(*;∀;)「なんでこんなことしたんだよ!!!!」

ミ,,゚Д゚彡「…………つーちゃん……」

(*;∀;)「お前にだけはこんなことはしてほしくなかった!!!!!」

つ∀;)「……お、お前には……皆に嫌われるようなことはしてほしくなかったんだ…………
お前は…………警察に追われるような身になっちゃ駄目だ…………」

ミ,, ― 彡「………………」

フサ…………


ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だよ。覆面もしてたし、あの演技、なかなかのもんだったろう?
あれでつーちゃんも俺も正体はバレていない。あいつらには
『庖丁魔とそれを狙って捕まえた怪しい人間』にしか映ってないだろうし、
庖丁投げもなかなか良かっただろ? つーちゃんが教えてくれた通りにやったから」

…………フサ……冗談はやめろよ…………俺の言いたいことぐらい分かってんだろ?……

(* ∀;)「……フサぁ……!!」

ミ,,゚Д゚彡「夢なんだろ? 世界を平和にするのが」

な、何言ってんだよ…………

(* ∀;)「…………お前のこと……襲っちまったのに……そんなこと信じれるのか?!……」

ミ,,^Д^彡「……そりゃ、最初はびっくりしたけどさ………………信じるよ
…………つーちゃんは優しいだろ?………………世界平和に悪役が必要だと思って、
自分がそれを買って出る……なんてね……普通はできないから…………」

……フサ…………そんなことまで見抜いていたのか……

…………その笑顔が眩しいぜ……

(* ∀;)「でも! お前がなんで俺なんかを助けたりするんだよ!!」

ミ,,゚Д゚彡「…………俺の夢…………実はつーちゃんと同じだったんだ…………
小学生の頃に諦めたけどね…………つーちゃんがまた火をつけてくれたからだよ……」

…………そうだったのか……

(* ∀ )「……でも、……それだけのために……あんな危ないことして俺を助けるかよ…………」

答えは分かっていた。卑怯な質問だった。

期待して聞いた。

フサは優しいけど……そこまでは優しくないんだ……

慢心でもなんでもいい。俺は気づいちまったんだ…………今のフサなら……

ミ,,-Д-彡「………………決まってるだろ……?……それだけじゃなくて……」


ミ,,゚Д゚彡「…………つーちゃんのことが好きだから。だよ」

……そう……絶対にこう言うってな…………

………………俺の望んでいた答え……はっきり言って嬉しいよ……

ミ,,゚Д゚彡「気づかなかったかい?……高校時代からずっとだったんだ…………」


そ、……そんな………………なんか損した気分だぜ…………

ミ,,゚Д゚彡「……俺はつーちゃんの夢、叶えたいから……俺にも世界が平和なのは喜ばしいことだし……」

(* ∀ )「…………そうか…………でもな……」

………………………


…………お前にこれ以上手を汚させてたまるかってんだ……!


ミ,,゚Д゚彡「……俺も……つーちゃんの作戦に参加させてもらうから」

(* ∀ )「…………だめだ……」

ミ,,゚Д゚彡「…………………………なんで?……」

温かくて冷たい口調の疑問。俺に拒否権が無いかのようだ。

お、怒ってないよな? フサ…………

俺の手は、フサから返してもらった庖丁を握りしめていた。

(#*゚∀゚)「だめだと言ったらだめなんだよ!!」

ミ,,゚Д゚彡「………………」


フサ……何で無言なんだ?

俺の心を見透かしているのか?

お願いだから見透かさないでくれよ

でも、お前に嫌われるのはイヤだ……

見透かしてくれないと……確かに辛いんだ……

…………孤独になりたくない……


フサが俺に近づいてきた。

ミ,,゚Д゚,彡「……つーちゃん…………」

……こ、こっち見てる…………マジな目だ……

(#*゚∀゚)「……く、来るな!! 刺すぞ!!!」

精一杯の抵抗だ…………

ミ,,゚Д゚,彡「……刺してくれても構わないから」

フサに効かないことは分かっていた。

(# ∀ )「…………あ、ああああ……」


(* ∀;)「…………お、…………俺もフサのことが…………好きなんだ……」

言いたくても言えなかった言葉が自然に出た。

(* ∀;)「……高校時代からずっと…………声を掛けてくれたあの日から……」

ミ,,゚Д゚,彡「…………俺も、つーちゃんのことが好きだから……」


(* ∀;) ミ゚,,  彡

フサ…………いつの間にこんなに近くに…………


………………!!!!

や、やめろ!! 今抱きしめられたらどうにかなっちまうぞ!!!



いや……抱きしめてくれ……


……!! 何言ってんだよ! 俺!!


(*"∀ミ゚,,  彡


あ、……ああ……抱きしめられちまった…………

……はあ…………温かい……


そう、そうだ、そのままもっと…………


…………ちょ!! …………それは……!!


フサの顔が近づいてきた。


(*"∀")「……あ…………フサ………………やめてく……」


やめないで…………

……そのまま……そのまま俺に……キ、……


……だ! だからお前……いや、俺!! 何言って────




唇が触れる。





(゚∀ミ゚,, 彡


俺の頬に。



「…………つーちゃん?……」


「…………フサ………………ごめんな……」



俺の理性は勝った。

それが吉だったのか……ちょっと自信が無いがな……


やめないで…………

……そのまま……そのまま俺に……キ、……


……だ! だからお前……いや、俺!! 何言って────




唇が触れる。





(゚∀ミ゚,,  彡


俺の頬に。



「…………つーちゃん?……」


「…………フサ………………ごめんな……」



俺の理性は勝った。

それが吉だったのか……ちょっと自信が無いがな……


(*゚∀゚)「…………お前に……そんなことされたら……もう何にも出来なくなる………………
…………力を奪わないでくれ…………この続きは…………………………また今度な」

フサは俺をもう一度抱きしめてくれた。

ミ,,-Д-彡「…………分かったから…………でも、……俺にも何かできることは無いかな……?」

(*-∀-)「………………そうだな…………世界を平和にな……俺だけじゃ出来そうもないんだ……」

ミ,,゚Д゚彡「どういうこと?」

(*゚∀゚)「……お前には皆に呼びかけて…………皆を結束させてくれ……庖丁魔から街を守るってな……」

Σミ,,゚Д゚彡「そ、そんなことしたら──

(*゚∀゚)「大丈夫だ…………俺のことは……なんとか皆に隠して……で…………大変だろうけど
…………事後処理頼むぜ…………失敗したら……俺達が二度と会えなくなるかもしれない
……あと……ギコ達には……俺が犯人だって知られたくねえんだ……」


……フサに再開するまで、こんな感情は抱かなかった。

俺にとって、フサや庖丁以外には何の価値も無かった。

友人……とかいうのも恋しくなった。

…………なんでだろうな……


ミ,,゚Д゚彡「……分かった……。皆を一生懸命踊らせるよ…………つーちゃんは隠れて……
それで、たびたび現れて……皆の前で踊るんだね…………皆は庖丁魔と闘って……
……世界が平和になったら庖丁魔は消えて、つーちゃんが帰ってくる……
…………それでいいんだね?」

(*゚∀゚)「……そうだ……俺は……もうこの街じゃ活動できない……警察も動き出してるしな……」


(*゚∀゚)「フサ……」

ミ,,゚Д゚彡「……何?」

(*"∀")「……そろそろ離してくれ……」

フサはずっと俺を抱きしめたまんまだった……………………俺だって本当はずっと……

…………なんでもない!!……


フサの体が俺から離れた。残念だ。

(*゚∀゚)「…………また会えるから…………な……」

ミ,,゚Д゚彡「…………信じてるから……………………世界を平和にしようね……」

(*゚∀゚)「ああ…………俺は一応これから隣町に行こうと思ってる…………俺の家の荷物は……
…………お前が預かってくれ……親戚の家に送るわけにもいかねえからな…………」

ミ,,゚Д゚彡「分かったから…………」

(*゚∀゚)「………………………………じゃ、じゃあな」


いよいよお別れか………………

………………フサに背を向けて、歩く……

……雲が晴れてきたな…………

………………綺麗な満月だ…………


ミ,,゚Д 彡「つーちゃん!!!!!!」


ミ,,゚Д;彡「……また……会えるんだよね……」


……フサ…………我慢してくれていたんだな……


(*゚∀゚)「……………………会えるに決まってるだろ!!」

……フサ…………………………ありがとう……


ミ,,゚Д⊂「………………分かった……」


ミ,,^Д^彡「……………………頑張っておいで!!!!」


俺を何度も救った笑顔。


(*゚∀゚)「ああ!!!!」




俺は走った。

全速力で、隣町に向かって。

振り返ればフサの笑顔がいつでも見える。

そんな気がする。



月。

綺麗な満月だ。

俺の宝物。

…………お前は月の光に当てても、やっぱり美しく輝くよな。

でも今は、




それだけじゃない。

終わり