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46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 18:43:05.27 ID:jl2DJ01U0
「はぁ、はぁ……!」
(;´・ω・`)「どうした、遅いぞ!」
親父は、振り返って俺を挑発。
汗だくだくのくせに、余裕を見せようとしている。
なめんなよ、くそ。
が。
「……き、きっつ」
俺の足はあれよあれよと失速。
結局、家に着いたときには、
(;´・ω・`)「俺の勝ちだな」
「だぁぁ……」
親父が勝ち誇った表情で、仁王立ちしていた。
かなり悔しい。つーか、俺、こんなスタミナ落ちてたのか……。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 18:46:38.61 ID:jl2DJ01U0
(;´・ω・`)「はぁ、はぁ。お前の負けた原因は、何だと思う?」
親父は息を切らしながら、問う。
「……す、スタミナ切れ」
(;´・ω・`)「違うな。はぁはぁ、お前は、本気を出さなかった。
躊躇したり、判断が遅れたり、途中で諦めたり……
そういう考えが、お前の足を止めたんだ」
「……精神論っすか?」
(;´・ω・`)「……」
俺は頭を軽くはたかれた。
(;´・ω・`)「飯っ!」
言って、親父はさっさと家ん中に入っていってしまった。
「……精神論が分からなかったのかな」
つくづく、分かりやすい親父だった。
というか、かなり重要そうな説教も途中で切り上げちゃったし。
「ったく……」
これじゃ、どっちが子供だか分からないじゃん。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 18:49:55.84 ID:jl2DJ01U0
――でも。
「大人ぶってる俺の方が、よっぽど子供か……な?」
俺は膝に手を着き、大きく深呼吸をした。
それから、顔をあげて空を見上げる。
腹立たしいくらいの……曇り空だった。
「天気、空気嫁」
言って、俺も家のドアを開いた。
「あ、お兄ちゃんお帰り!」
妹がばたばたと駆け寄ってきた。
ただいま、と言って、俺はリビングへと向かう。
親父は飯を食っていた。一人で。
(´・ω・`)「母さん、ビール」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 18:52:09.55 ID:jl2DJ01U0
「家族が揃うまで待つだろ、普通」
(´・ω・`)「ちょっとつまんでいただけだ」
「コロッケ一個ないんですけど」
(´・ω・`)「……」
親父はだんまりを決め込んだ。
やっぱ、この人は子供だ。
「お兄ちゃん、お父さんとどっか行ってたの?」
「あ? あぁ、まあ、ちょっとな」
「えー! ずるい、私も連れてってよ!」
「お前、寝てたじゃん。ま、次の日曜日に気が向いたら……」
俺はちらりと親父の方を見る。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 18:56:44.21 ID:jl2DJ01U0
(´・ω・`)「ふむ……」
親父は新聞を読んでいた。
たぶん、テレビ欄だろう。親父は空気が読めない。
いや、空気を読まないだけなのかもしれない。それもそれで、有り……かな。
「なあ、親父」
(´・ω・`)「……」
「俺さ、もっかい野球部、作ってみるよ。メンバー集めて、来年こそ大会に出てみせる」
俺ははっきりと、そう宣言した。
ずっとビビってた。一所懸命やって、結果が出ないことを恐れて、俺はずっと逃げていたんだと、思う。
だから、親父に追いつけなかった。
がむしゃらに、他人の目も、空気も気にせずに突っ走った親父の背中に、追いつけなかったのだ。
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/27(木) 19:04:18.64 ID:jl2DJ01U0
だけど。親父が珍しく忠告してくれたんだ。
『後悔はするな』と。
素直に、受けようと思う。俺だって、もう子供じゃないんだ。
かっこいいとか、悪いとか。
そういうのを気にするのは、そろそろ卒業しようと思う。
「その、ありがとな」
(´・ω・`)「……」
親父は新聞を畳み、テレビのチャンネルを掴んで、言った。
(´・ω・`)「今日はロンドンハーツのスペシャルでも見るか」
……訂正。
親父は『マジで』空気を読まない人間である。
妹は、顔に?マークを浮かべていて、お袋は軽く笑いながら配膳をしていた。
ほんと、実の父親ながら、心配になる。大人って、こんなモンでいいのだろうか?
――たぶん、いいのだ。御託を並べるドラマの俳優なんかよりは、親父の方がずっと、いい。
俺は、ロンドンハーツに夢中の親父を見て、肩をすくめため息をついた。
(´・ω・`)「今日のイケメン芸人はつまらんな……」
やれやれ、威厳の欠片もない親父だよ、ほんとうに。