私は長く険しい旅をしている。

あるとき遠方の友から「旅が苦しくなったら私のとこを頼るといい」と便りがきた。食べ物や近隣の街の情報を送ってくれたこともあった。


旅はいよいよ過酷を極めてきた。

心が折れそうだ。

友の家の灯りが見える。

私はいよいよ友を頼って家の扉を叩いた。


中から友が出てきた。

「便りをありがとう。君を頼ってここまで来たよ」

「お疲れ様!来てくれてありがとう」

「辛い道程だった…自分にはまだ力が足りなかったかな」

「旅は辛いよ、みんなそうさ」

「この辺りは風が強く体力が削られる」

「そう、だからゆっくり一歩ずつ歩くといいよ」

「……道を間違えたのか、地面がぬかるんで足がもつれるし泥がついて身体も冷えた」

「あの道はよくみんな間違うみたいなんだ」

「…………妻がくれた御守りだけを握りしめてここまでこれたよ」

「君には君の大切なものがある、大丈夫だ!これからも進めるよ!」

「……………………ありがとう、がんばるよっ」


そこまで話して私は家の扉から離れた。中に入れてくれる気はないんだなと感じて…。


もしかしたら家の中では何か大事な用事が行われている途中だったのかもしれない。急な来客だとか、プライベートなこととか。

ただ、友のいう"頼って"はどういうものだったのだろう。

想像を働かせながら すっかり冷たく見える家の灯りから目を背けた。


:突発的文章・物語・詩