零れる言葉に想いを託し

作 黒野伸一
小学館


旅行先の岩手県盛岡市。その駅近くの書店でこの本が大々的に展開されていました。
盛岡を訪れたのは純粋に観光だったのですが、その書店さんの店内を見て虚を突かれました。一番よく見える所に数枚の写真のポスターが貼ってありました。東日本震災からあと一か月と少しで三年になります。忘れていた訳ではないけれど記憶は風化しかけていました。そんな私に突き刺さった、震災に遭われた方の笑顔のポスター。盛岡という地で、それを目にして、もうすぐ三年、されど未だ三年なんだと思いました。

正直に言いますと私は書店さんで某映画の原作を買おうかとうろうろしてました。そんな中で惹かれたのがこの『限界集落株式会社』。本の存在は知っていましたが、手に取ろうとしたのは書店さんのPOPを読んでです。
震災について書かれていたPOPは（後々気付いたのですが、その書店さんに勤めている方が本作の解説を書かれたらしく）解説の一文でした。
盛岡という地で働いている方の実体験がそこにありました。
解説といえば高尚な先生方の堅苦しく時に不愉快なものが多いイメージしかなかった私には、実体験を交えたPOPが気になり、購入に至りました。
先に解説の感想というのもおかしなものですが、この書店員・松本さんの解説はとても読みやすく、さり気無く著者の他の本も勧めていらっしゃって、流石だなぁと思いました。

さて長くなりましたが、本作について。
いわゆるエリートであった多岐川優が会社を辞め、一時休暇のために父方の実家である田舎にやってきたのが始まりです。
人口は少なく、農業しかないような田舎で、優は村を豊かにする為に農業の経営を始めます。野菜嫌い、虫嫌いのいい年したおっ…三十代前半の優は田舎の暮らしに戸惑い、農家と反発しながら本格的に村おこしをしていくのですが…。

こう…ひねくれたものばかり読んでいたせいか、いつ絶望がやってくるのかと身構えていたら、案外（いや、それほど案外でもないですけど）無事解決したんだなーというのが読み終えて最初の感想です。
村が四苦八苦しながらもめきめき大きくなっていくのが面白かったです。実際問題それが可能か、というのは私は農家ではないのでわかりませんが、この『限界集落株式会社』には、希望があって面白かったです。よくある町おこしでも、こういうやり方もあるんだな…と素直に思いました。

作 成田良悟
アスキー・メディアワークス（電撃文庫）


静ちゃんと臨也さんの決戦の幕が上がります。
これなんかデジャヴと思ったらバウワウだわ…と読みながら気付きました。
今回は二つの決戦です。静ちゃんと臨也、そして帝人と正臣。

あまり多く語る言葉もないのですが、私はやはり成田さんの大勢の登場人物が連鎖していくのも好きだけど、こう…各人物の日常みたいなのも好きな訳で。
静ちゃん、臨也、新羅の高校時代の回想がとても平和で（例の二人は殺気ばしばしですが）和やかでよかったなと思いますし、ラストの新羅には、新羅について見直すというか一途故の行動の素敵さといいますか…新羅の印象が多少変わった気がします。
13巻に至るまで出てきた人物達が関わり、時にはかすり、連鎖して、こういう終わり方になったのかーとしみじみ。正直懐かし過ぎて『ああ…そういえばそんな人もいた気がする』の多いこと！本当に！！
何気に静ちゃんが好きだったのでラストは安堵しましたね。同時に寂しさもありました。静ちゃんと臨也のやり取りがもう見れないかと思うと残念でなりません。
終わってしまったな…とあとがきを読んでいたら何やら続編が決まっているようで？！しかも時軸が少し違うみたいです。期待して待機しておきます。
なんにせよ成田先生お疲れ様です！！

作 都月景
JUMP J BOOKS


U:Xの二作目になります。
これ前回も言っていたかも知れないんですが、キャラが！わからない！！
サモンナイトの1と2をプレイしたのがもう10年以上前なんですよ！メインキャラ以外は本当にすぐに思い出せなくて、都度都度読みながらういき先生を開いてました。その節は大変お世話になりました…。

さて今回はですね、前回が主人公ミコトについてだとすると、今回は一応1メインになるのかな？もう時軸が混乱するんですけど、1と2と4はミモザ先輩の結婚パーティで知り合いになったみたいです。というか…ほんとさらっと結婚されてるからびっくりしました。ギブソン先輩とね。もうびっくりですよね…（ミモザ先輩ばかり印象に残っててギブソン先輩を忘れてただなんてそんなははは…）
マーン三兄弟も懐かしすぎて三男の記憶が薄くて画像見てようやく思い出したレベルです。
ミニスもなんだかもうお嬢さんですし！なんてこった！！
あ、あとですね後半で2のキャラが登場するんですが、わたくしてっきり『マグナとアメルの同棲？！！まじか！！！』と思ったらハサハもネスもバルレルもいました。安定の兄弟子。ありがとうございます。個人的にはトリスがよかった。主人公は男子しかいないみたいですね…。

と、ざっくり述べました。さて本題です。今回のこれって主人公であるはずのミコトそっちのけでハヤトでしたね！ハヤトとキールの話でしたね！！（力いっぱい）
前回はミコトの出生で鬱展開、今回はキール関連でまさかの魔王？展開という…流石都月先生！！展開の連鎖がたまりません！！
終盤ではなんとかハヤトがおさまりましたが…もう一人の謎の人物といい、ますます風呂敷が広がる予感ですね！！
次回作もお待ちしております！！次は先生出てほしいです。

作　壁井ユカコ
ポプラ文庫ピュアフル


五龍世界シリーズの第二巻になります。
一巻を読み終えてから本当に、ハードカバーを先に読むか迷って迷っての間に文庫が出てので即購入に至りました。とはいっても読み始めるのが遅くなってしまったのですが。

ちょっと意外だったのだが、ユギが主人公じゃなかったこと。てっきりユギが主人公だと思ってました。
今回のメインは碧耀。妓女として働いていた碧耀が見受けされることになり、嫁入りの旅の途中から始まります。
そこからまたもやイルラックが関わってくるのですが…。

今回なんかイルラックおいしいとこありすぎじゃない？と内心こんなおいしいイルラックにちょっともやっとしていたけど全然そんなことなかったですね。安定の不運で安心しました（？）やはりイルラックは不運で御人好しであるのがイルラックですよねー。
それと左慈と珞尹のなんともいえない距離感…。ここだけの話、私すっかり珞尹の存在忘れてまして。文庫を買った時に表紙のこの人らは誰やろう…（武智さんは読み進めていく内に理解しました）と思っていたら読み終えてからこの一人偉そうなのが珞尹かとようやく気付く始末でした。

珞尹一人の問題かと思えば何やら他にも裏があるようで…これからどんな展開になっていくのか第三巻が楽しみです。