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嘲笑


僕の親友(名前はA君とします)の体験した話です。
僕が頼み込んで絶対笑わない事を約束に聞きました。
まず始めに断っておくと僕らはある学校の寮に住んでいて、
お風呂は大浴場でした。

A君はバイトをしていていつも夜遅くに帰ってきました。彼
が帰る1時頃には普段数人の学生が風呂を使っていたんです
がその日は土曜ということもあり、彼はその浴場で一人でし
た。

彼はその時怖いと言う気持ちは微塵も無く、ただ「一人じゃ
ん、ラッキー」程度に思ってその大きな浴場に壁に背を向け
てつかりました。浴槽につかり出して2分ほどしたころに、
彼は後ろのほうから不思議な音を耳にしました。

「ジュルッ…ジュルジュル…」


始めは彼は後ろの壁の向こう、つまり低学年用の大浴場で誰か
寝ズリでもしてんのか?と小さく笑ったそうですが、その音が
だんだんA君の頭の後ろのほうまで近づいてくる気がしたそう
です。しかし、一瞬後、彼は水中にいました。なんと彼曰く、
何かに頭の上から押し込まれたそうです。

彼はパニックに陥りながらも、もしかしたら友達が知らない間
にびびらせようとしたのかと思い、水中で目をあけ、ぼんやり
と見える水上の様子を見上げました。そこには白い霧のような
ものが漂っていました。

そしてその力はとても強くて抜け出せず、彼は恐怖と息苦しさ
のあまり水中で気を失いました。

その時、たまたま入ってきた先輩が溺れている彼(気絶寸前だっ
たらしい)を発見し、彼を救助、A君は救急車で運ばれ、発見が
早かったのが幸いし一命を取りとめました。

A君はそのことを誰にも告げず、ただバイトを辞め、風呂には
多くの学生たちがいる8時頃に、浴槽には決してつからなくな
りました(今でも)。

しかし話はそれだけでは終わりませんでした。

ある日先輩はA君を呼び出し言いました(話はとても長いので簡
略)。
その話の内容はおまえが溺れてた時、湯気が人の形をしておまえ
を押さえつけてた。
ソイツは俺のほうを見て(なんとなくわかったらしい)壁の中に逃
げ込んだ。
そして、あれはいったいなんなのか?
というものでした。

その時、A君はそんなものを見たのに救助に来てくれた先輩の度
胸に感服したと言ってました。

そして、最後に先輩は気になったのでオレが調べるけどおまえは
どうする?と聞き、A君は何かわかったら教えて欲しい、と言っ
てポケベルの番号交換し別れたそうです。

そして数日後、その先輩から真相が分かったと言って明日の朝の
登校前に会いたいと言うメッセージが届きました。A君はその日
すぐに寝て明日を待ちました。


朝、待ち合わせの場所には先輩はきませんでした。ただ、その日
は何故か一時間目の授業が無く、全校生徒が体育館に集められ、
教壇にたった副校長は一言言いました。

昨晩、5年6組の山下卓郎君(先輩の本名、仮名)が浴場で亡くな
った、とのことでした。死因は心不全とのことです。しかし、こ
の集会がやたらと短かったのを覚えています。そして、先生方は
足早に体育館から去っていきました。A君はその時釈然としない
何かを先生方の態度から感じ取ったそうです。

その日ついにA君は先輩が死ぬ前に訪ねた定年まじかの先生に話
を聞きに行きました。その先生は始めに「やっぱり来たか…」と小
声でつぶやき、最初のうちは何もしらんで言い張っていたようで
すが、A君が毎日その先生の部屋に来るので先生もついに根負け
し話を始めました。

「最初に断っておく。絶対笑ったり、口外したりすんな、分かった
な」

そう言うと先生は話し始めました。


20年ほど前の冬にある学生いたそうです。彼はは少し周りと違
っていて、少し気味悪がられていて、ちょっとした(今のような酷
いものではなかったらしいが)イジメのターゲットとなっていたら
しいです。

ある日の夜中、彼は遅くに風呂に入りました。その時数人の友達
が彼をおちょくって笑おうと言って、彼が浴槽からでる所に濡れ
た石鹸を置き、彼がスッ転ぶのを見て爆笑、その後彼も爆笑、と
いう計画の些細な悪戯でした。

しかし、運悪く彼は頭の打ち所が悪く動かなくなり、友達たちは
恐くなって部屋に逃げ帰りそのことは誰も触れなかった…しかし
次の日彼は死んでいた。凍死だった。裸のまま朝まで発見されな
かったからだ。

その後、彼の友達たちは誰にも何も言えず、彼の葬式で本当に悔
いていたと言った。しかし、その中の一人がある日突然、自宅の
風呂場(土日で家に帰っていたと思われる)で死亡、立て続けにも
う一人も死亡した。

最後に残った一人は風呂が嫌いで三日か四日に一度しか入ってい
ないのが幸いし生き残った。しかし他の友達が死んでからはご飯
もロクに食べずにノイローゼとなった。そして彼は訪ねてきた当
時の担任、つまり今話してくれている先生、に全てを打ち明けた。


先生は学校の名誉のためもあるので、誰にも言わないと約束し彼
の部屋を後にした。しかし、数日後に彼は衰弱死した。最後の夜
彼は「やつが来る!!」と「悪かった!!」を叫びつづけていたそう
だ…

数年後、先生は卒論の担当をしているある学生と飲む約束をした。
その時、酔いも任せて先生はついその話をしたそうだ。その学生
は爆笑した。「石鹸で!!滑って!!し、死んだって!!バ、馬
鹿ですね〜!!」とその学生は笑い転げた。その時先生は、何故か
嫌な予感がしたという。

その次の日、その学生は息を引き取った。風呂で…

その話を聞いて先生は「これが2度目だ…」と小さくつぶやいた…

僕等は笑わなかった、いや笑えなかった。
きっと彼はいつもあそこにいるんだろう。そして、たまたま聞こ
えた彼のはいずり音に苦笑したA君を狙ったんだと僕は思う。そ
して自分の死を嘲笑ったもの、全てを殺す気なんでしょう。

そして、今もA君を狙っているのかどうかは分かりません。

ただひとつ、なんで僕がここにこの話を書いたか、分かりますか

それは今はノイローゼとなりつつあるA君が哀れで…

あなた達の誰かに…

この呪いを…

きっと彼は訪れるでしょう…

彼を嘲笑ったあなたを殺しに…

霊が見れる方法

俺が高2の時に体験した話をする。

俺は小学生の頃から怖い話が好きで、
そのテの本やテレビの特番やなんかは必ず見ていた。
高校に入っても、クラスの好き者と集まっては
よく怪談話をしていた。霊を見たいと思っていた。
ある日、教室で弁当を食いながら、いつもの連中、
K(リーダー格)やD、Sなんかと怪談話をやっていると、
同級生のYが何気に仲間に加わってきた。
俺は、その時女の子もいて「キャー、キャー」やってたから、
Yも一緒に騒ぎたくなったのだろうと思った。するとYは、
「おい、K。おまえ、幽霊見たことあるのか?」
と聞いてきた。Kは「ないよ。見ようとしていろんなことやったり、
行ったりしたけどな」と答えた。
「おまえが霊を見たいなら、確実に見れる方法を教えてやろうか?」
「なに???」
Yによると、Yはいわゆる見ちゃう奴で、子供の時からそうだったので、
今ではもうなんともないという。ただ、霊によってはかなりきつい時もある。
だから、遊び半分であまり霊とは関わらないほうがいい。
俺たちがよくそのテの話をしているので、ちょっと忠告にきた、
とのことだった。

「俺のいうとおりにすれば、絶対に見れるけど、どうする?」
「おお! 教えてくれ!」
他の連中も「マジかよ!」「見ようぜ!」とか言って興奮している。
Yによるとその方法は、不慮の事故とか、殺人とか、この世に未練を残した人の
死んだ現場に行って、心の底から同情してやることだ、という。
本当にあなたは可哀想な人だ、この世でまだやりたいこともあっただろうに、
できることなら私が替わってあげたかった・・・というふうに。
そうすれば、必ず幽霊が現れる、という。
俺たちはさっそくその週末の土曜日に実行することにした。
メンバーはいつもの、K、D、S、俺、そしてOBのS先輩の5人。
いつもキャーキャーいっている女どもは怖すぎるといって、不参加。
場所は東京の郊外にあるO市の山道だ(我々はK市に住んでいた)。
そこは、24才のOLがレイプされ、絞殺死体で発見された場所だった。
当時、わりと記憶に新しい事件だったとはいえ、図書館で新聞記事を
探したり、事前に資料をそろえたのだから、我々もなにか
とりつかれたような感じだったかもしれない。

土曜の深夜12時に、俺らはS先輩の家の前に集合して、先輩の車で
現地に向かった。車中、みんなそれぞれギャグをかましながら
陽気にしていたが、内心ビビッてるのは明白だった。
俺も、車が街道から田舎道に入って、あたりが鬱そうとしてくるにつれ、
こりゃ、やっぱまずいんじゃねーか、と思い始めてきた。
対向車もいなくなり、まわりが畑や林ばかりになってくると、
先輩の隣で地図を見ながらナビしてたKが「この辺だぞ」と叫んだ。
声がうわずっているのがわかる。時計を見ると1時半を少しまわっていた。
車を道の端に停めて、俺たちは現場を探すことにした。
俺はカセットテープレコーダーと懐中電燈、それと密かに持ってきた
お守りをポケットに入れて外に出た。
Dがコンビニで買った「写るんです」でその辺をバシバシ撮ってる。
S先輩が車に残り、ヘッドライトを消すと、いきなり暗闇になったが、
道沿いの外灯と月明かりでわりとまわりが見える。
山のほうへと続くわき道を50メートルくらい入り、現場らしきところを
探していると、さすがに背筋が冷たくなってくる。
ここら辺で人が殺されたんだ・・

しばらく歩いていると、「あっ」とSが声を上げた。
「どうした?」と俺が聞くと、Sは斜め向こうの地面を指している。
見ると、そこだけ草が取り払われ、小さいお猪口みたいなものに
線香がささっていて、まわりに花が供えてある。
俺は懐中電燈でそこを照らしながら、皆の顔を見た。
月明かりのせいか、青白い精気のない表情をしている。
全員無言。俺は情けないことに足が震えて、
腹のあたりの力が抜けてきたのを感じた。
これはまずい。どう考えても尋常じゃない。
俺が「やっぱよそうぜ。シャレになんないよ!」というと、
Kは「何言ってるんだ!ここまできたんだぞ。やるしかねーよ!」
と、ひきつった顔つきで食ってかかる。
DもSも泣きそうな顔をしている。
「本当に出てきたら、どうすんだよ・・・」Dがか細い声を上げる。
「ばかたれ! それを見に来たんだろうが。でも・・逃げればいいよ」
Kも怖いに違いない。必要以上に大声で怒鳴る。
結局Kの勢いに負け、霊を呼び出すことになった。

全員で目をつむり、花が供えてある場所に向かって両手を合わせ、
いち、に、のさんで同情する。
俺はカセットを録音状態にして、足元においている。
全員両手を合わせ、身じろぎもしない。
あたりからは、虫の鳴き声と、
ときどき吹く風にそよぐ葉の音以外は何も聞こえてこない。
俺は目をつむりながら、「○○さん(名前は調べてあった)、
頼みますから出て来ないでください」と一心不乱になって祈っていた。
俺は、冗談じゃない、幽霊なんて見てたまるか、と思っていた。
あれほど見たがってたのに、いい気なものである。
しばらくそうしていると(実際は1分も経っていないと思う、
今から思えば)、一瞬まわりの空気が変わったような気がした。
なんていうか、密度というか濃さというか・・・
そして、口の中がおかしい。妙にきな臭いような、錆びくさいような感じ
になってきて、これは恐怖でのどがカラカラになったに違いない、
あるいは貧血の前触れかも・・などとあれこれ考えていた。すると、
「あぅっ! わわわぁ!」と声にならない叫びがあがった。
「ど、どうした!」俺は飛び上がり、他の連中を見た。

Kが座り込んで、口を大きく開けたまま前方を凝視している。
見ると、女があお向けに寝転がって、首だけ起こしてこちらを見ている。
俺は頭が真っ白になった。まるで映画のワンシーンを
スローモーションで見ている感じとでもいおうか。
「あぎゃーっ!!!」
転げるようにその場から逃げ出し、もと来た道をめちゃくちゃに
走った。前方をDとSが走ってるのがわかった。
(あれ、Kは。それにカセットを忘れた)
信じてもらえないかもしれないが、大パニックのさなかに
俺はそんなことを考えていた。そして後ろを見ると、
さっきの場所にKがまだいるのが見えた。
(やばい!)
俺は引き返し、カセットをひったくると座ったままの
Kの頭をボカッとなぐった。女のほうを睨みつけるように見ると、
さっきの体勢のままだったが、体の輪郭がきらきらし始めて、
体は、なんというか、しゃぼん玉がだんだん薄くなって透明になり、
消えていくように、消えてしまった。
俺は呆然としているKを引っ張っていく道すがら、
(出てくるなと言ったのに出てきやがって)
という怒りでいっぱいだった。もちろん、今から思えば
非常に身勝手なのだが、その時はそう思ってた。

先輩の車まで来ると、DとSが狂ったように手招きしてる。
「早く来い!」「何してる! 逃げるんだ」
猛スピードで車を走らせている先輩に、一部始終を話すと、
「マジかよ・・」と顔をこわばらせ、しきりにバックミラーをのぞく。
Kによると、一瞬腰が抜けて動けなくなり、その間中、
あの女と目が合っていたらしい。
車中、全員で目撃したことを言い合い、間違いなく
一致していることを確認した。
あれはやはり幽霊だったのだ。殺された女の霊が出てきたのだ。
そう考えるのが一番自然だ。そう結論づけた。
翌日曜日、俺たちはKの家に集まって、Yを待っていた。
昨日の出来事を全部話し、幽霊が見れるYに判断してもらおう
というわけだ。しばらくしてYがやってきた。
俺たちを見て、どこか沈んだ顔をしている。
昨日の一部始終を話すと、「やっぱりな」といった。

「なんかいやな予感がしてたんだ。本当にやっちまったんだ」
「おまえが言い出しっぺなんだからな」Kが毒づく。
「いくらなんでも強姦されて殺された女なんて・・・」
「おまえ言っただろう、この世に未練がある奴って」
「で、おまえ同情したのか?」
「ああ、あたりまえだ」Kが言う。
「俺は出てくるな、と念じた」俺が言う。
「俺もだ」「俺も」DとSが言う。
「あれはやっぱり幽霊か?」俺が聞くと、Yは「ああそうだよ、
間違いないね」と言った。
「俺はあの女と見つめ合っちゃったんだからな」とKが弱々しく笑った。
「今、おまえの肩にのってるよ・・・」とYが言った。
「??!!」

その年の冬、Kは休学し、翌年退学した。家族そろって長野に
引っ越して行った。理由はあえて言わない。
後から考えて、俺にはわからないことがある。
Yは最初、俺たちを心配して、霊にあまり関わるなと言いたくて
近づいてきたのではなかったか。なのに、あえて霊の呼び出し方法を
教えたのはなぜか。Kが引越してから、YがC子と付き合い出した
のも偶然か。C子はKの彼女だった。あの日、Yが近寄ってきた日も
C子はKのそばにいた。
たぶん俺の妄想なのだろう。今となってはどうでもいいことだ。
それから、あのカセットを翌日全員で聞いた。
ザーッという音のなかにかすかに「・・しぃ、・・しぃ」
と女の声が入っていた。Yは「苦しい、苦しい」と言ってる、
と言うが、俺には「悔しい、悔しい」に聞こえた。

階段下の男

俺が高校の頃の話。
秋頃、友人のMが悩みでもあるのか元気がなくなった。
友人連中で相談でも聞いてやろうと思って聞き出したら
「絶対笑うなよ」と前置きして話し出した。
悩みとはつまるところ「家に幽霊が出る」ってことだった。
もちろん笑ってしまった。
おまけにMの家に泊まって幽霊を見に行くという展開に。
Mは笑われたことで気が進まないようだったが、
他の人間が幽霊を確認するってのには賛成だった。
(どうも自分の頭がおかしくなったんじゃないかとか思ってたらしい)

Mの体験ってのはこうだった。
俺達が話を聞いた4日前。家族が寝静まった深夜。
そろそろ寝ようかと思ってMは寝る前にトイレに行った。
用を足し終えてトイレから出てくると電気のついていた廊下が真っ暗。
トイレの中の電気だけが廊下を照らしている。
廊下の明かりのスイッチをパチパチと切り換えるが反応無し。
「電球が切れたのか」とMは思った。
仕方がないので暗い中を手探りで部屋まで帰ることにした。
せめてもの灯りにトイレの電気を付けっぱなしにしておく。
それでも廊下の先は暗かった。
目は慣れてないが勝手の分かった自分の家なので問題なく階段まで辿り着いた。
後は階段を上ると自分の部屋はすぐそこ。
しかし階段は真っ暗だった。

「2階の廊下の電気もつけとけば良かった…」Mは後悔した。
諦めてゆっくり階段を上るM。
ギッギッギッ……。階段を上る足音がやけに大きく聞こえる。
ギッギッギッ……。さらに上る。自分の部屋の灯りが見えてきた。
「パッ」
階段を半分上ったところで突然背後の1階の廊下の電気がついた。
驚いて振り返るM。

階段の一番下に背広姿の男がいた。

父親かと思ったがもっと若い男だった。
くしゃくしゃの短い髪にグレーの背広。俯いていて顔はよく分からない。
Mは驚きで動けなかった。

そして男はゆっくりと足を上げると階段を一歩のぼった……。

気がついたらMは自分の部屋で目を覚ましたらしい。
俺達は夢じゃないのか?と突っ込んだんだけど、
トイレの電気は付けっぱなしだったらしい。
(母親に電気の付けっぱなしを注意されたとのこと)

Mはそれ以後、夢にまでその男を見るという。
あの男が階段の下で自分の部屋をじっと見ているんじゃないか。
あの男が一段ずつ階段をのぼって自分の部屋まで来るんじゃないか。
そういう想像まで膨らませていた。
「夜中にトイレなんかとてもじゃないが行かれへん。
学校の階段でも下に人がおったらビクッとしてまうくらいやし。」
Mはかなりビビっていた。

俺達はMのその話に盛り上がってしまいノリノリだった。
その週の土曜日にMの家に泊まりに行くことに即決した。

土曜日は雨だった。しかも台風接近中(笑)。
それでもM家訪問は決行された。
夕方にM家に集合。面子は俺とFとN、そしてもちろんM。
夕飯をご馳走になって深夜までゲームをしたりして時間を潰した。
Mの家族が寝静まると作戦開始。
一人ずつトイレに行って帰って来ることにした。
「奴」が出やすいように1階の電気は使用不可というルールになった。
くじによる順番決め。
N、F、俺という順番になった。Mは断固として拒否。
そのMの態度にちょっと怖くなる俺。
どこかでMの話を疑っていた俺だが、
雰囲気でMは嘘はついていないと思った。

Nが行った。帰ってくる。
「何もでぇへんなぁ」と笑う。でもちょっと怖かったに違いない。
やや引きつり気味の顔だった。
次はF。帰りが遅い…と心配になったころに帰ってきた。
「クソしてた」とか抜かしやがる。マイペースなFらしいと言えばらしい。
Mはその間怖さを紛らわすためかずっとゲームを続けていた。
我関せず、といった感じだった。

俺の番になった。
暗い廊下に出てトイレを目指す。
階段は少し急なため慎重に降りた。
話の通りギッギッと音がする階段。
階段を下りて右手に曲がりトイレへ。
トイレの電気は付けっぱなしだった。
Fが気を利かせてくれたのか、ただ単に消さなかったのか。
何にしても灯りがあるとホッとした。
用を足そうと思ったがなかなか出ない。
2階にいるときはあまり気にならなかったが
台風が近いせいか雨の音が結構大きく聞こえる。
ザーーーーという音。どこか不安になる音だった。


トイレから出る。
電気はどうしようかと思ったが
後で来て消せばいいと思い、つけたままにした。
正直ちょっと怖かった。
怖い話が好きな俺はこういうときに妙に想像力が膨らんでしまう。
暗い廊下の先に背広姿の男が見えるような気までした。
やや早足で階段へ向かう。
はやくMの部屋に戻りたい、と思った。
階段を上る。雨の音。
暗い上に慣れない急な階段のせいで速くは上れない。
後ろを振り返りたい衝動に駆られたが本当に男がいたらと思うと振り返れなかった。
やっと半分まで来た。…Mが言っていた階段の半分。
後ろに人の気配がする…と感じた。
その時、背後の1階の廊下の電気がついた。

「!?」思わず振り返る。

男がいた。スーツ姿。俯いている。
おまけに1階の電気がバチバチと激しく明滅し始めた。

俺は情けないことに一瞬でパニックに陥った。
1階の方を向いたまま階段を上ろうとした。

すると男は四つん這いになるとダダダッと階段を駆け上がって来た。
明滅する灯りの中、コマ送りで近寄ってくるように見える男。
あっという間に男は迫ってきた。

俺は声も出なかった。





男は俺に顔を寄せるとニヤッと笑って「ビビったか?」と言った。
…男は上着だけスーツを着たFだった。

今だから笑えるけどあのときは本当に死ぬかと思った。
Fが男役でNが電気を付ける役。前もって決めてたらしい。
俺がトイレに行っている間に1階の奥に移動したんだと。
くじまで細工するという周到ぶり。MもMで黙認してるし。
俺は安堵でこいつらを怒る気もしなかった(ヘタレ)。

…結局、Mの体験が何だったのかは謎のまま。
その後Mは元気になり、俺はちょっと元気じゃなくなった。

坂道で

 3年前、実家に帰省したときの話。
 実家の近所に100m位のわりかし急な坂がある。道の横は
両方土手で、人が落ちないように1m程度の石塀が立ってる。
 ちょうど夕焼けで辺りが微妙に暗い時間ってあるでしょ。そんな
時間に用事があってその坂をのぼってたのよ。こんな時間だし、
実家は田舎だから俺以外の通行人はいなくて。そうしたら坂の
てっぺんにこっちに背を向けた髪の長い女が立ってるのね。別に
立ってるだけだから普通なんだけど、何か気になって視線が
外せなくなった。
 女がくすんだ薄ピンクのスーツを着てるのが認識出来るくらいまで
接近しても、俺は女の後ろ姿を見続けた。そんで女もピクリとも
動かないのよ。髪は風でふらーっとなびいたりはしてるけど。
 10m位まで接近して、もういい加減見るのよそうと思って
視線逸らそうとしたとき。

 女の首がガクンって180度真後ろに倒れてきた。

 俺はぎょっとして一歩引いたよ。表情は見えなかったけど、
見えなくて正解だったかも。

 
 しかも女は後ろ向きのまま(顔はこっち向きだけど)
すたすたすたすたとこっちに向かってきやがった。
 俺は背を向けて走り出した。下り坂だしあっちは早歩きだから
逃げられると思って。でも走ってる間なんでか俺は女に追いつかれ
そうになってることに気付いてた。その通り、女はカッカッカッと
足音を立てながら俺に追いつき……そのまま抜いていった。抜かれた
ときに女が通ってった右側の腕と頬にざわ〜っと鳥肌がたったよ。
 それでもはぁ助かった…と思って立ち止まって息を付いて……息が
止まった。
 女が坂の下に立ってた。最初と同じく、背をこっちに向けて。
首は普通に戻ってた。
 まさか……そう思った通り、また女の首がガクッと倒れてこっちに
向かって歩いてきた。

 
 冗談じゃねーよと思って俺は回れ右して今度は坂を駆け昇った。
さすがにさっきよりペースダウンしてて、これじゃ簡単に追いつかれ
ちまうって思ったんだけど、今度はなかなか来ない。足音はするんだけど。
あと坂の出口まで10m位まで来て、今度は平気か?と思った直後、
女は俺を追い抜いていった。上を見ると案の定おんなは頂上で背を
向けて待っていた。
 仕方なく俺は背を向けて坂を駆け下り……ってのを二往復して、
さすがにへとへとになった俺は強硬手段に出た。
 塀を乗り越えて土手に降りたのよ。今思えば最初からこうしときゃ
よかったかも。勢い余って5m位滑り落ちたけどなんとか持ちこたえて。
坂まで戻って怖々塀から覗いてみたけど、女はいなくなってた。
 でもなんか道に戻るのがイヤで、土手沿いに歩いて帰ったけど。
今でもちょっと坂道はやだね。坂道全力疾走したのなんて後にも先にも
これだけだよ。

日本人形

森久美子の体験談。

久美子が友人三人と旅行に行った時の事。
とある旅館で一泊する事になっていた。有名な旅館との事。
食事をおおいに楽しむとあとは寝るだけ。
寝床は結構な広さの和室だった。
生け花や掛け軸、日本人形が飾ってあった。
四組みの布団に各自潜り込むと、疲れからか一人、また一人
と眠りに入っていく。
久美子も眠くなって来た。
スーッ、スーッという寝息が耳に心地良い。
ところがふと気付く。
四人で寝ているのに聞こえてくる寝息が多い気がする。
あれ?部屋を見回して見た。
友人達は気持ち良さそうに眠っている。
気の性か。そう思いながら寝返りを打った。
ふと目に入ってきたモノ。

赤い着物の日本人形だった。
最初に見た時は確か舞を模したポーズだったのに何か変だ。
おまけに物音まで聞こえて来た。
フーッ、フーッ、フーッ、息苦しそうな呼吸の音。
バサッ、バサッ、バサッ、何の音?
目を凝らして人形をよく見てみる。
動いていた。
両手をゆっくり上げては降り下ろす
両手をゆっくり上げては降り下ろす、その繰り返し。
そしてその度にフーッ、バサッ。
久美子は思わず小さな声を上げてしまった。
その声に気付いたのか、人形は久美子の方に向き直る。
そして一言。

「見るな」

久美子は気を失った。
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