真夏日の続く夏のある日。人間は朝から季節はずれの大掃除をしていた。
 その顔は焦りに染まってて必死そのものだ。
 同じ表情をしたポケモンたちと共にあらかた部屋をひっくり返した人間は、
「見つからない……どこいっちゃったのエアコンのリモコンちゃん……」
 と呟いて、蒸し暑い空気の中床に伏し、ポケモンたちもへにゃりと座り込む。
 ソファで寛いでいたブースターだけが呆れたように片目を細めた。





 首を振る扇風機の前で人間とポケモンが扇状に並んでいる。ブースターはぎらぎらと照る日差しの下で心地良さそうに昼寝しているが、あまりの熱さにリーフィアはぐったりと仰向けになってシャワーズに寄りかかっていた。
 腹ばいに寝そべったシャワーズは迷惑そうに目を細めているが、弱っているリーフィアをどかそうとはしない。エーフィは一番暑さがマシな日陰で腹を見せてぐったりしている。

 体育座りをした人間の肩を軽く叩くものがあった。鏡に移したように人間とそっくりな容姿のそっくり人間が、氷水のグラスを手渡す。
「ありがとー」
 嬉しそうにグラスを受け取るとそっくり人間がどろりと溶けて、紫色のむにむにとしたメタモンに戻った。グラスを一口煽ってから人間はメタモンを引き寄せる。

「冷やっこくてきもちいー」
 とメタモンに顔を埋める。メタモンは嫌がる様子もなくされるがままにむにむにされている。
 しばらくむにむにしていた人間が、ん? と顔を上げた。そしてメタモンの背中の一部をむに、むにむに、と触診するように揉む。

「リモコン、あったかも」
 その言葉にエーフィが体を起こす。リーフィアとシャワーズは視線だけ人間に向けた。
「なんかこのあたりに長方形の固いものがあるんですが」
 と言う人間を振り返りながら、メタモンはむにりと伸ばした手らしきもので背中側をさわる。背中と手らしきものが溶け合ってしばし、再び分離したメタモンの手には長方形の白いリモコンが握られていた。

「あった! リモコンあった!」
 叫びながら人間がエアコンをつけ、窓を閉める。うだるような暑さにまだ変化はないが、今から涼しくなることを知ってリーフィアとシャワーズが体を起こした。寝転けていたブースターがしょぼしょぼと目を開ける。
 人間に抱き上げられながら申し訳なさそうに鳴いたメタモンに、歩く時は物を巻き込まないよう気を付けてね、と笑い、涼しくなるまでメタモンをむにむにし続けた。