日当たりの良いソファに小さな茶色のポケモンが寝そべっていた。だらりと手足を投げ出して、安心しきった様子でぴぃぴぃと寝息をたてている。
 畳んだ洗濯物を片手に、人間は起こさないようにそっと移動する。しかしうさぎのように長い耳はぴくりと震え、うっすらと焦げ茶の瞳がのぞいた。くありと大口を開けてあくびを一つ。

 片付けを終わらせた人間がイーブイに手を伸ばすと、寝ぼけ眼のまま頭を手にすり寄せた。甘えるイーブイを膝に抱き上げて、人間はソファへ腰を降ろす。膝をころころと転がり前足で腕を掴む姿に、人間の頬が思わずゆるんだ。
 このイーブイはペットでもコンテスト向けでもなく、バトルのために育成されている。レベルも技も性格も心意気も申し分ないが、強気故に甘える姿は珍しかった。

 掴まれた右手をそのままに、左手で背を撫でる。イーブイはうっとり瞳を閉じた。
 細く開けた窓からは暖かな日差しと、揺れる木々のさざめきと鳥たちのさえずりが入ってくる。
 いつしか喉の鳴る音は穏やかな寝息に変わり、撫でる手は静かに止まり、やがて人間の首が緩やかに倒れた。
 後はもう麗らかな微睡みが残るだけだった。