プロローグが3話もありますが、要約すると以下の2点しか書かれていません。
1.ポケモンの世界にトリップ
2.せっかくだから俺はトレーナーになることを選ぶぜ!


* * * * *






 なんか……寝心地が悪い。背中とかチクチクして不愉快だ。違和感で意識が覚醒してゆく。
 目蓋ごしにも眩しい。無理やり目を開けると、俺は上半身裸で森に倒れていた。しかもなにか、体つきが幼いような……。

「…………はいぃ?」

 状況を確認しての第一声はこれだった。だって意味わからん。なんで俺、子供の体になって見覚えのない森に転がってるの? 昨日は酒も飲まず普通に帰宅して風呂入ってベッドで寝たよ? 夢? 夢か? 夢にしてもなんで森で半裸放置? そーゆープレイ? それともドッキリ? 一文無しで1ヶ月樹海生活とか無謀な企画が始まっちゃってるの? 黄金伝説よりは水曜ドーデショーや電波少年寄りの企画だな。
 っか葉っぱが刺さって露出してる肌がイタカユイ。取り敢えず立つか。

 どうすんべ、と当たりを見回すけど、木々と葉っぱとパンいちの俺と細身のストールしかない。見覚えのないオシャレストールを拾い上げてみる。汚れや臭いはないな。

「裸マフラー」

 なんとなく巻いてみたけど、半裸にマフラーってすごく怪しい。
 あー……うん、むかーしむかし外国の盗賊は金品と女と身包みまで剥いでも、最後の情けでネクタイだけは残したって聞いたことあるな。全裸ネクタイ。
 アレ? 今俺まさにそんな状況? 眠ってる間に強盗事件が発生して身包みまで剥がれるもストール一丁で放り出された? 現代日本版情け? なら犯人は武士か?それにしたって半裸にストールってシュール過ぎだろ。いやいや強盗じゃあこの貧相な体つきの説明になってないじゃねえか。

 良い感じに混乱を極める俺の意識は、ガサ、とどこからか聞こえた、木の葉を踏みしめる音でようやく外へ向いた。耳を澄ましてみるけど、それきり音は聞こえない。気のせいかもしれないなぁ。
 いや、気のせい、だろうか? 現在地は見知らぬ森だ。
 心臓が嫌なふうに早鐘を打った。焦りのまま、けれどなるべく静かに早足で移動を始める。
 音の主が狐や狸ならいいけど、熊とか野犬とか猪だったら勝てる訳ない。隠れる場所のない所でじっとしてるのは危険だ。

 なるべく土の露出している、裸足で踏みしめても大丈夫そうな場所を選びながら、背の高い木々の合間を抜けてゆく。隠れられそうな場所を探すけど、行けども行けども景色は代わり映えなく森で、気ばかりが急く。
 背後に差し迫った気配はない、と思うけど、気配なんて読めないから分からない。とにかく安全な場所へ、出来れば人里へ。訳解らない事だらけだけど生きてればなんとかなるっしょ。
 落ち着くよう自分に言い聞かせ、滑り気味でも思考を続ける。だって思考停止してぼーっと油断してるより、考え事しながら身構えてる方がいいに決まってる。
 つっても今はとにかく逃げる以外できないんだけど。ってゾンビゲームみたいだな。やべ、ゾンビものってだいたいバッドエンドだ。思い出すんじゃなかった。

 無駄に思考を重ねる間にも手足は動かしている。出来る限り周囲にも気を配っているつもりだったが、何かに足を取られ転倒してしまう。そしてそれっきり金縛りのように動けなくなってしまい……。

「待ちなさい! ……っきゃあああああ!?」

 半裸にストールで地面に這いつくばっている所を可愛いお嬢さんに目撃されてしまったのだった。合掌。いや、むしろもっと見て〜ってか(ヤケクソ)。


次話 気付いたらパン1